以前は、パソコンやサーバーなどのOA機器を事務所に設置するのが主流でしたが、近年、さまざまなクラウドサービスの登場でビジネスが大きく変化し続けています。
中でも”クラウドストレージ”は、ビジネスに取り入れることで、ファイルの円滑な共有や共同編集が可能になったり、BCP対策や導入・運用コストの削減ができたりと、さまざまなメリットが得られます。ただ、もちろんインターネット上にデータを保管するクラウドの仕組み上、利用に際しては気をつけるべき点もありますので、そのメリットとデメリット、ビジネス向けクラウドストレージサービスの選び方などを解説していきます。
クラウドストレージとは
ITインフラを構築する方法は、大きく分けると「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。オンプレミス型とは、自社のデータセンターに構築した物理的なITインフラでコンピュータリソースを運用・管理する形態です。クラウド型は、物理的なハードウェアを導入する必要がなく、クラウド事業者が提供するコンピュータリソースをオンライン環境で利用します。
クラウドストレージとは、クラウド上に設けられたデータ格納スペースのことで、オンラインストレージとも呼ばれますが、この「物理的なITインフラを構築する必要がない」という点がクラウドサービスの最大の特徴で、例えば、自社のオンプレミス環境で基幹システムを運用するためには、サーバーやネットワーク機器といった物理的なハードウェアを導入し、その上でシステムを設計・実装しなくてはなりません。しかし、クラウド型の基幹システムであれば物理的なITインフラを構築する必要がないため、ハードウェアの導入費用とシステムの保守・運用管理に要するコストを大幅に削減できるというメリットがあります。
クラウドストレージを活用するメリット
【メリット1】場所を選ばず、簡単に利用できる
クラウドストレージが普及する以前は、セキュリティを確保するために、社外からVPN接続などを利用して社内に設置されたファイルサーバーへアクセスしてデータの閲覧などをしていましたが、クラウドストレージは、インターネット環境さえあれば、社外でも、社内にいるのと同じようにデータにアクセスできますので、外出先からスマートフォンでデータを確認したり、テレワークで従業員を働かせることも容易になります。
【メリット2】データの共有や共同編集もできる
以前は、データを共有する際にUSBメモリやメールを利用することが主流でしたが、クラウドストレージであれば、メンバーにアクセス権限を付与したり、ファイルのURLを教えるだけでデータの共有が可能になります。また、クラウドストレージの中にはファイルの共同編集が可能なものもあるため、以前のように誰か1人がファイルを開いているときに、ほかの人がその作業が終わるのを待つというような時間的なロスも減らすことができ、業務を効率的に進めることができるのです。
【メリット3】データのバックアップが容易にできる
クラウドストレージの場合、データはクラウド上にアップロード(保存)されていますので、例え災害などにより事務所のパソコンやサーバーに物理的な被害を受けたとしても、事業継続が可能となりますので、”BCP(事業継続計画)”対策としても有効です。
【メリット4】コストが削減できる
社内にサーバーを設置して利用するオンプレミス環境の場合、導入時に機器代、設置工事費用などの初期費用がかかりますし、機器の設置に際した場所の選定や既存機器との接続確認などの準備、運用開始後の定期的な保守やセキュリティ対策も自社で行わなければなりません。
しかし、クラウドストレージの場合、サービス提供事業者がシステムのアップデートやメンテナンス、必要なセキュリティ対策を講じる上、その費用は利用料金に含まれていますので、利用者がこれらの作業を行う必要はありません。一般的に、インターネット上で利用登録すればすぐにクラウドストレージが利用できますので、大掛かりな初期費用の発生しません。
クラウドストレージの注意点・デメリット
【デメリット1】オンライン利用が前提
基本的に、クラウドサービスの利用にはインターネット環境が必須なため、インターネットが利用できない環境ではクラウドストレージにアクセスすることができません。また、インターネット環境下でも、通信品質が悪く、回線状況が不安定な場合、ファイルを開くのに時間がかかったり、保存ができないといった不都合が生じる可能性があります。
なお、サービスによっては、一部オフライン作業に対応しているものもありますので、サービス内容を十分に検討し、モバイルWi-Fiルーターやスマートフォンのテザリング機能を利用することでこのデメリットを解消できる可能性があります。
【デメリット2】カスタマイズなどの利便性が低い
クラウドストレージは、サービス提供事業者がシステムを管理するので、初期費用や維持費が低く抑えられるメリットがある反面、提供されるサービスをそのまま利用することになるため、自社でカスタマイズできる部分は少なく、利用開始時には各サービスが用意しているプランやオプションなどを十分に検討してから申込む必要があります。
【デメリット3】セキュリティ対策
クラウドストレージ自体のセキュリティ対策はサービス提供事業者が行うものの、クラウドはオンライン環境で利用するサービスのため、不正アクセス対策やアクセス制限の管理などデバイスやインターネット接続環境自体のセキュリティ対策は利用者自身が行う必要があります。例えば、パソコンなどのデバイスについて性能が著しく低いものの排除やそのウイルス対策、アクセス制限の適切な設定と管理、退職者のアカウント削除、データ通信時の暗号化、従業員に対するセキュリティ教育の徹底など、意図しない情報流出を防止するためには万全の体制が求められます。
また、これだけクラウドサービスの利用が拡大してくると、悪意のあるサイバー攻撃集団がクラウドサービス提供事業者をターゲットにする可能性もありますので、機密情報や顧客情報など特に重要なデータの保護に万全を期すためには、オンプレミスの記憶媒体にバックアップを取っておくという対応策もあります。
クラウドストレージサービスの選び方
クラウドストレージサービスにはさまざまなプランがありますが、ビジネス利用の場合は特に以下の点を考慮することが重要です。
1.ストレージ容量
クラウドストレージサービスのほとんどが、利用可能なストレージ容量と利用料金が比例しています。つまり、容量が大きければ大きいほど利用料金が高くなるのです。ここで重要なのが、現在自社で保存している移行予定のデータ容量がどのくらいあるかだけではなく、そのデータが文書ファイルや表計算ファイルなのか、それとも動画や高画質な画像なのかを確認することです。データが文書ファイル等であれば将来的にもそれほど大きな容量は必要ありませんが、動画などの場合は今後も大きな容量が必要となりますので、初めからある程度大きな容量を確保するか、オプションなどで追加していけるサービスを選ぶ必要があります。なお、Microsoft 365やGoogle Workspaceなどのクラウドストレージ機能を有したグループウェアの場合、利用アカウント数を増やすことで利用可能なクラウドストレージ容量が追加になるものもありますので、自社のIT導入状況によって検討しても良いでしょう。
2.利用可能デバイス
パソコンで利用できるからと安心してはいけません。多くのクラウドサービスがスマートフォンやタブレットでも利用可能ですが、初期設定が難しかったり、利用はできるものの操作性が悪く使い勝手が悪いものもあり、デジタルの便利さやスピード感に慣れた現代の私たちにとっては、使い勝手が悪いサービスは敬遠されがちで、最悪の場合導入しても現場に浸透しない可能性があるのです。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で利用可能あれば、出張先や現場などで作業することができ、さまざまなデータを社内外で共有することができるので、自社の使い方を踏まえた上でサービスの選定を行いましょう。
3.セキュリティ性能
先にも述べたように、クラウドストレージへはインターネットを経由して接続し、重要なデータを扱うため、セキュリティ対策が必要になります。万が一情報漏えいなどが起これば、個人情報保護法などによる処罰の対象になるだけでなく、信用失墜による会社存続の危機に陥る可能性もあります。
例えば、多要素認証(ID・パスワード以外に指紋などの生体情報を利用した認証方法)やワンタイムパスワード機能を有していれば、IDやパスワードが他人に知られたり、サイバー攻撃を受けたとしても第三者にログインされる可能性は限りなく低くなります。また、アクセス制限機能があれば、ファイルやフォルダごとに閲覧・編集できるユーザーを制限できるので、ファイルの重要度や担当する業務の範囲などに応じて利用制限をかけることもできます。
そのほかに、情報セキュリティ対策に関する国際規格であるISO27001に対応しているかどうかも、サービスのセキュリティ性能を判断する上での判断基準となるでしょう。
クラウドサービス選びに迷ったときは
世界では、WEB3やAIなどさまざまなITツールの開発競争が進み、次々に便利なITツールが生み出されています。
しかし、誰もが簡単に利用できるものばかりではありません。
株式会社誠では、ExcelやWordだけでなくクラウドストレージなども備えたMicrosoft 365の導入サポートも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
⇒お問い合わせ