数年前まで良く耳にした”DX(デジタルトランスフォーメーション)化”ですが、最近耳にすることが減ったような気がします。それは、ChatGTPや生成AIなどを活用することで生産性が向上するという事実が広く浸透したため、DXが当然と捉えられるようになったのではないでしょうか。
しかし、日進月歩で進化を続けるデジタルテクノロジーを活用できる人材(以下DX人材という。)を確保するのは容易ではなく、DXを推進するため、今、多くの企業ではDX⼈材の確保・育成が喫緊の課題となっています。
DX人材の ” 定義 ”
日本企業でDXが進まない理由の一つに「DX⼈材の⼈材像が明確になっていない」ことがあります。DX白書2023(IPA 独⽴⾏政法⼈情報処理推進機構)によると、⽇本企業における「DXを推進する⼈材像を設定していない」 割合は40.0%であり、⽶国の2.7%に対し、⼤きな差が⾒られます。
「DX⽩書2023」図表1-20︓DXを推進する⼈材像の設定・周知(「DX⽩書2023」(IPA 独⽴⾏政法⼈ 情報処理推進機構))
DX人材の ” 獲得・確保 ”
⑴「DX⽩書2023」図表1-23︓DXを推進する⼈材の獲得・確保(上位を抜粋)
⑵「DX⽩書2023」図表1-24︓DXを推進する⼈材の育成⽅法(抜粋)
⑴表から、DX推進のために⼈材を獲得・確保する取り組みとして「社内⼈材の育成」「既存⼈材の活⽤(異動などの再配置を含む)」を挙げる企業が多くなっている反面、⑵のグラフによれば、DX推進のために人材を育成する研修等を会社として実施・推奨する割合は低いままだということが分かります。
DX人材の ” 育成が上手くいかない理由 ”
DX推進のためにその人材の確保を急ぐ企業が増えたことから、人材育成に関する様々な課題があらためて表面化してきています。
DXの本質とは、単にレガシーなシステムを刷新する、高度化するといったことにとどまるのではなく、事業環境の変化に迅速に適応する能力を身につけること、レガシーな企業文化(固定観念)を変革することにあるとされています(引用:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました (METI/経済産業省))。
次に、その本質を念頭に置いた上で、DX人材育成の位置づけを見ていきましょう。
DX人材育成の位置づけ
DX人材育成は、DX人材戦略の中でも企業のDXを実現するための全社戦略の一環として位置づけられます。
下図のとおり、DX人材の育成・配置は、そのDX人材戦略の中で取り組むべきテーマであり、人事面の取り組みテーマの中でも現実的に効果が出やすい領域です。
DX人材育成において考慮すべき事項
DX人材を育成する上では、「環境」、「DXの各段階における人材像」、「候補者の配置」を特に考慮して進める必要があります。
1.環境
人は「環境の生き物」と言われるように、パフォーマンスは周囲の状況(組織、人間関係など)に影響を受けます。DX推進の成果は『個人の特性』と『環境』の両方で決まります。
まず環境を整えるために、チームリーダーは「従業員が業務に集中できる環境を作る」、「期間を決め、目標を作る」、「決めた期間の半ばには全体の進捗を確認する」、「自分やチームに合ったツールを利用する」など考慮する必要があります。また、従業員の教育に力を入れるだけではなく、リーダー自身も成長する必要があり、そうすることで組織全体の成長が促されるのです。
2.DXの各段階における人材像
求められるDX人材といっても、ただITに強ければ良いというわけではありません。
DXを進めていく段階に応じて、求められる人材が変わっていくのです。
ここでは、大まかに「始動(立上)期」、「発展期」、「拡大期」の各期に分けましたので、各期の状況部分を確認しましょう。
3.候補者の配置
社内の人材をDX人材として配置する場合や本業とDX業務を兼務させる場合には注意が必要です。
本業にDX業務を追加する場合、業務改善の速度が遅いだけでなく、本人の負担が大きくなります。
本業の一部を行いながらDX業務を行う場合、業務改善の速度は遅くなりますが、他の従業員の協力さえ得られれば本人だけに負担がかかるのを避けられます。
DX業務に専従させる場合、業務改善の速度は速くなりますが、他の従業員の負担が大きくなる可能性が残ります。
DX人材を新規雇用する場合は、業務改善の速度は速くなりますが、人件費の増加や会社への適応に時間を要するなどの問題もあり、これらは各企業の実情に合わせて工夫する必要があります。
また、DXを進めるに当たっては、目的を踏まえて、柔軟に組織体系も対応させていく必要があります。
DX人材のゴールとステップ
DX人材育成のゴールを設定するには、育成計画を立てる際に「どの部門を、いつまでに、どの状態にするか」を明確にする必要があります。
まずは「学習の五段階モデル」を参考にして、必要な知識やスキルごとにどの水準を求めるかを検討しましょう。もちろん、現場の業務改善を考えると、目指すべきは三段階「できる」から四段階「実践できる」レベルになります。
このとき、育成前(ITに不慣れな)の人材が扱うITツールは以下の要件を満たしていることが求められます。
①インプットの負荷が小さいこと
②アウトプットがすぐにできること
③トライ&エラーができること
DXの戦略(方針)の検討
目標水準が明確となったら、利用するITツールの選定と共に、ベンダーのサポートや外部研修(座学・プロジェクト参加)などを検討します。座学(インプット)だけでは習得できないことも多く、成功と失敗を繰り返して気づきや学びを得るアウトプットとしてのプロジェクト参加(経験学習)が重要となります。
なお、厚生労働省が、従業員の人材育成、スキルアップのための助成金として”人材開発支援助成金”を用意していますので、条件などを確認して対象となる研修を活用するのも良いかもしれません。
ガバナンスマップ
自社がどのポジションにいて、今後どのようなポジションを目指すのか検討し、ガバナンスマップを作成することで、ガバナンスのあるべき姿を想像し、理解を深めることにもつながり、ガバナンス体制やITツールの運用ルールなど、適切なガバナンスの構築につながります。
株式会社誠というITベンダー
株式会社誠では、中小零細企業のDX化サポートを行っており、IT導入の目標設定やスケジュール作成、ツール選定、ツール導入サポート、社員教育などさまざまなシーンに対応しています。
”売上を伸ばしたい” 、”従業員の負担を減らしたい” 、”事業を拡大したい” など、ITを活用して中小零細企業のやりたいをサポートできる企業でありたいと思っています。
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