【生成AIに必要なのは「ITスキル」より「国語力」?】中小企業DX戦略

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この記事の結論(先に3行でお伝えします)

  1. 企業の生成AI活用率は34.5%まで上がりました。壁はもう「導入」ではありません。
  2. 止まっている理由は、コストでも技術力でもなく「自社の仕事にどう当てはめるか分からない」という一点です。
  3. 突破口は、意外にも「自分の考えを言葉にして伝える力」にあります。

はじめに:あなたの会社の生成AIは、まだ「高性能な検索窓」で止まっていませんか?

「ChatGPTを入れてはみたものの、結局は検索と同じ使い方しかしていない」

最近、経営者の方からこうしたご相談を本当によくいただきます。生成AIが広く使われ始めて約3年。メディアでは連日「AIによる業務効率化」「企業のDX」が語られていますが、現場の実感はどうでしょうか。

本コラムでは、私が愛知県内の製造業の社長や、名古屋市内の教育現場で対話を重ねる中で見えてきた「中小企業のAI活用が進まない本当の理由」をお伝えします。


1. 従業員20名の設備保守会社。社長と交わした、ある会話

先日、愛知県内で自動車関連工場の設備設置・保守を手がける企業(従業員約20名)の社長とお話しする機会がありました。油の匂いと熟練の技術が息づく、日本のものづくりの最前線です。

そこで私は、日頃感じている違和感を率直にお伝えしました。

「生成AIが使われ始めて約3年経ちますが、ほとんどの方が、未だに検索方法の一つとしてしか使えていません。非常にもったいないと感じています」

社長も深く頷いておられました。

私自身、これまでにロータリークラブや中小企業家の経営者団体、業界団体、市内の中学校などで生成AIに関する講演を重ねてきました。その経験から申し上げると、検索以外にアイデア出しや相談相手として少しでも使えている方は、全体の5〜10%程度という肌感覚です。

「仕事や生活に本当に役立っている」と言える方となると、さらに限られます。というより、どのように使えば自分たちの仕事に役立つのかが分かっていない、というのが正確な印象です。


2. データで見る現在地──壁はすでに「導入」から「使い方」へ移っている

この肌感覚は、客観的なデータとも一致します。

帝国データバンクが2026年3月に実施した生成AIに関する企業の動向調査※1(全国23,349社対象、有効回答10,312社)によると、生成AIを業務で「活用している」企業は全体の34.5%。すでに3社に1社が業務で触れている計算です。(※1:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日)

ただし、企業規模別に見ると景色が変わります。

生成AIの用途内訳を示す棒グラフ
出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日)をもとに株式会社誠作成
  • 大企業:46.5%
  • 中小企業:32.4%
  • 小規模企業:28.0%

従業員1,000人超の企業では6割を超えており、規模が大きいほど活用が進んでいるという構図がはっきり出ています。

「何に使っているか」に、もったいなさが表れている

さらに注目すべきは用途の内訳です。同調査では、主な用途として「文章の作成・要約・校正」が約45%と突出し、「情報収集」が約22%、そして「企画立案時のアイデア出し」はわずか約11%に留まりました。

企業規模別の生成AI活用率を示す棒グラフ

つまり、すでに使っている企業の中でさえ、AIを「考えるパートナー」として使えているのは1割程度。私の講演現場での肌感覚(5〜10%)と、ほぼ重なる数字です。

導入という意味での壁は、確実に下がりました。いま企業の前に立ちはだかっているのは、「入れた後、どう使うか」という壁なのです。


3. 最大のボトルネックは「自社の業務にどう当てはめるか分からない」

なぜ「検索の代わり」で止まってしまうのか。ここにも裏付けとなるデータがあります。

総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年公表)※2では、生成AIを利用しない理由として「生活や業務に必要ない」が4割超で最多、次いで「使い方がわからない」が4割近くを占めました。企業側でも、導入にあたって最も多く挙がった懸念は「効果的な活用方法がわからない」でした。(※2:総務省|令和7年版 情報通信白書|個人におけるAI利用の現状

「令和7年版 情報通信白書」2025年公表
出典:「令和7年版 情報通信白書」2025年公表、個人の「利用しない理由」第Ⅰ部 第1章 第2節 2(1)個人におけるAI利用の現状

注目していただきたいのは、1位が「怖い」「危ない」という拒否感ではないという点です。並んでいるのは、

  • 自分の仕事とAIの接点が見えていない
  • どこにどう指示を出せばいいのか分からない

という、きわめて実務的な戸惑いです。

コストでも技術力でもなく、「自社の仕事において、AIに何をどう指示すればいいか分からない」。これが中小企業にとっての最大のボトルネックです。


4. 名古屋の中学校で意気投合した、AI時代に必要な「本当のスキル」

この停滞を破るヒントは、意外にも教育の現場にありました。

先日、名古屋市内の中学校でキャリアナビゲーターを務める方と話をした際のことです。私はプログラミング教室の運営や名古屋市教育委員会のキャリア教育に関わらせていただいているため、話題は自然と「子どもたちのAI活用」になりました。

彼女はこう言いました。

「子どもたちも同じで、まだまだ使い方を工夫できている子は多くありません。学校でも、生成AIを含めて学習を進めていくことを検討していきたいと考えています」

大人も子どもも、置かれている状況は同じでした。そして、私と彼女が完全に意気投合したのが次の一点です。

生成AIを上手く使うには、「自分のやりたいこと、考えていることをまとめて、言葉で伝える」必要がある。だからこそ、AIを使うほどに「伝える力」が求められ、同時に養われる。さらに、出てきた回答を自分で吟味して活用する力も要る。このインプットとアウトプットの能力こそが、現代において最も重要視されている能力である。

20名の製造業の現場と、名古屋の中学校の教室。まったく違う場所で、同じ結論に行き着いたのです。

なお、この見立ては日本の現場だけの話ではありません。世界経済フォーラム(WEF)の「Future of Jobs Report 2025」※3でも、2030年に向けた中核スキルの上位に「分析的思考」「創造的思考」が挙げられています。AI時代に必要なのは、高度なプログラミングスキルではなく、自分の思考を整理して過不足なく伝える力なのです。(※3:2025年雇用の未来レポート |世界経済フォーラム

💡 具体的な指示の出し方(プロンプト)については、続編で詳しく解説しています。
👉 【入力3分で成果が変わる】生成AIを「優秀な右腕」に変える指示出し3ステップ


5. すでに始まっている「使いこなし格差」

ここで、経営者の方に最も注意していただきたいデータを一つ。

先の帝国データバンクの調査では、生成AIによる悪影響・トラブルとして「ない」が67.7%で最多だった一方、「使いこなし格差の拡大」を挙げた企業が18.8%にのぼりました。

社内で「AIを使いこなす人」と「使えない人」の間に、生産性の差が生まれ始めているということです。しかもこれは、若手・ベテランといった年齢の問題ではありません。自分の考えを言葉にできる人かどうか、という問題です。

将来にわたって、AIが使えないと全くダメだというわけではありません。しかし、使えるか使えないかで個人の差が出てくる。そして会社としても、AIによって生産性にかなりの差が出てくる。これは確実です。


6. まとめ:AIに使われる会社か、AIを使いこなす会社か

建設業、サービス業、製造業、小売業──どんな業種であっても、パソコンを使う業務は必ずあります。そう考えれば、AIが使えることは企業として必要になってくる。私はそう考えています。

AIによって使われる会社か。AIを上手く使って、生産性高く事業を伸ばしていける会社か。その差はどんどん広がっていく。

だからこそ、中小企業が取り組むべきことは2つあります。

  • 会社自体のDX化(ネットワーク、クラウド、セキュリティ、データの整理)
  • 社員一人ひとりのAIリテラシーを高めること(言語化能力・論理的思考力)

この両輪が揃って初めて、生産性は向上します。片輪だけでは、高価なツールが宝の持ち腐れになるか、個人の努力が組織に広がらないかのどちらかで終わってしまいます。

まずは、「自分の考えを言葉にしてAIに伝える」ことから始めてみませんか。


【AI活用・DX推進でお悩みの中小企業様へ】

株式会社誠では、中小企業様のIT活用・DX推進サポートや、社員向けのAI活用研修(プロンプト作成・言語化トレーニングなど)を行っております。

  • 「何から手をつければいいか分からない」
  • 「導入したが、社内で使いこなせていない」
  • 「自社の業務に合ったAIの活用法を知りたい」

このようにお考えの経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。名古屋を中心に、愛知県内の中小企業様の現場に寄り添ったご支援を行っています。中小企業様の現場に寄り添ったご支援を行っています

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著者プロフィール

田上 寛(たのうえ ひろし)/株式会社誠 代表取締役

名古屋を拠点に、中小企業のIT活用・DX推進を支援。HP制作・SEO対策・集客改善・採用支援から、クラウド移行・業務自動化・セキュリティ対策まで幅広く対応する。業種を問わず経営者と並走するスタイルで、現場目線の課題解決にあたっている。

経営者団体や業界団体、教育機関などで生成AIに関する講演を行うほか、企業向けのAI活用研修も担当。プログラミング教室の運営を通じて、次世代のIT教育にも携わっている。